前回は当面の方針を大まかに決めたので、さっそくそれに従ってボリューム基板とリムショット回路を組んで行きます。
ボリューム基板は、はじめ最低限の部品だけ載せてさっさと進めようかとも思っていたのですが、どうも全部組まないときちんと動かないようで、全部品載せてしまいます。ボリューム基板はほぼボリュームとジャックだけでできているので手間はかかりますが回路的には単純です。ボリュームは基板への取り付けのために端子の加工が必要でしたが大きな問題はなく無事に取り付けを完了しました。
メイン基板とボリューム基板は34ピンのピンヘッダをフラットケーブルで繋ぎます。完成状態では階層構造になるため、このケーブルは短くする必要がありますが、製作中はメイン基板を何かと触らないといけないので製作中にだけ使う長いフラットケーブルを用意しました。
ここで一つ問題が発生。この部分は、特に難しいところはないな、と油断していたのがいけませんでした。ボリューム基板のジャックは、下のように配線されています。
RS LEV2 と書かれた端子は、出力レベルを決めるボリュームを介してリムショット回路の出力につながれています。J7 にプラグを刺すとリムショットの個別出力が得られるわけです。問題は、ジャックのピン 1, 2 の配線、これは回路図をきちんと読んでいなくて、どこかミキサ回路の出力につながれていると思い込んでいました。ところがこれは実はミキサ回路の入力につながれています。各音源の出力は一旦ボリューム基板を通ってレベル決めされてからミキサ回路に戻されていたのです。考えてみればそれはそうですね。問題なのは、ジャックの種類。製作に使ったジャックはステレオではありますが1スイッチ型のもので、図では 端子3 はあるけれども 端子 2 がないのです。どういう動きになるかというと、ミキサ回路へは一切音が行かないことになります。マスタ出力が出ないのはいけません。ジャックは全部要交換です。両面基板の部品付け替えは基板を壊しやすいので面倒です。少し気落ちしました。
ところで、こういう接続方法はあまり見たことがありません。オリジナルがどうなっているか気になったので、TR-909 のサービスマニュアルを見たら下のようになっていました。モノラルジャック、1 スイッチ型です。これはよく見る普通の設計です。analog さんはどうして変えたのかな?多分、個別出力をとって切れたミキサ側の入力が宙ぶらりんになるのがノイズを拾いそうで嫌だったんじゃないかと思います。analog さんの設計ではプラグを刺すとミキサ側の入力はアースに落ちます。彼らしいです。
さて、ボリューム基板は当面これで良いので予定通りリムショット回路を組みます。こちらでも、0.027μF のコンデンサを買い忘れてしまうという失態をやらかしましたが、部品箱をあさって 0.022μF のフィルムコンデンサと 0.0047μF のセラミックコンデンサが出てきたのでこれを並列にして代用しました。他は特に問題ありませんでした。
組みあがると、プロセッサからボリューム基板までの間、信号の流れに沿って部品が配置されるのでアリの行列みたいになりました。おもしろいです。
ファームウェアは予定通りベロシティーを最大に固定、リムショットスイッチを押したらトリガが出るように組みます。トリガ幅をどれぐらいにすれば良いかよくわからないのですが、回路図を見る限りトリガ幅が音に影響することはなさそうなのでまずは適当に 100ms に設定しました。
さて電源投入、ファームウェアのバグを取って無事にリムショットの音が出ることを確認しました。それから、リムショット駆動のトリガ幅を決めるために、トリガ回路の入り口にオシロスコープを当てて、波形を確認します。計算すれば良いんですがずぼらで。オリジナル回路で C111 の出力にあたるところです。
以下がコンデンサを通したトリガパルス波形です。1ms ほどでで収束しているのでトリガ幅も 1ms あるいは安全をとって 1.5ms ぐらいにするのが良さそうです。909 のサービスマニュアルをざっと読んだところではパルス幅の指定は見つかりませんでした。熟読すれば見つかるかもしれませんが。
ところで、クローンのリムショット回路では、オリジナルにあった最終段の HPF が省かれています。オリジナルではレベル決めのボリュームがリムショット回路中にあるのに対して、クローンでは後段でレベル決めをするので収まらなかったのかな?機能部分には柔軟に自分の使いたい機能を入れていましたが音部分は忠実にもとの回路を使うどころか部品も極力同じものを使っていた analog さんにしては珍しい気がします。この辺の判断の話、聞けたら良いのに、と思います。