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MC34063 を使った DC-DC 昇圧電源の設計

今改造中の DR-110 は 6V の電池または 9V の ACアダプタを電源にしていますが、USB とつなぐことも検討しているので USB から電源が取れると便利です。 DR-110 の回路図を見ると、電源には最低でも 6V 必要です。 USB からの給電は 5V なので、少しだけ持ち上げる必要があります。今後も USB からアナログ回路への電源が取れるとなにかと便利なので、入手しやすい DC-DC 電源 IC を探して使い方を覚えることにしました。

Jameco が近所にあってそこに在庫があればその日のうちに部品が入手できるので、ここにあるチップしかも DIP パッケージのものが使えれば便利です。調べてみると、MC34063 というチップが安価で在庫豊富です。このチップは、昇圧、減圧、極性反転すべて可能で容量も 1.5A あり応用範囲が広そうです。ほかのサイトを見ても入手しやすいようで、DC-DC コンバータの定番チップであるようです。まずはこの IC の使い方を覚えることにします。

DR-110 の電源として使うには、5V の USB 電源から 7V ぐらいに昇圧すればちょうど良いです。消費電流は 50mA も取れれば良いはず。この仕様なら IC の性能の範囲に楽々収まるのでこの設計をしてみることにします。

最初は資料集めからです。Jameco で扱っている MC34063 は STMicro 製で製品ページはこちらですが、データシートには使い方の要約が書かれているだけで、この回路の知識がないとこれだけでは設計できそうにもありません。ので、ONセミコンダクタTI の製品ページからデータシートとアプリケーションノートを入手しました。アプリケーションノートはどちらの配布も内容は同じなようです。先に見つけたのは TI のページでそちらの資料を使いました。

これが、データシートに載っている昇圧電源の回路図、内臓のオシレータによりQ1/Q2 スイッチを断続して、Lにエネルギーを貯めて昇圧します。5番ピンに入る電圧を監視して、コンパレータによりスイッチングのタイミングを変えることにより出力電圧を安定させます。巧妙にできていますね。

この回路定数をそのままR2だけを変えて 5V → 7V の昇圧になるように設定して実際に回路を組んでみましたが、出力電源に盛大なリップルが入ってそれがノイズとして聞こえてしまい使い物になりませんでした。もっと丁寧に回路定数を計算する必要があるようです。アプリケーションノートには動作原理から回路定数の計算方法まで詳しく書かれているのでそれに従って回路定数を計算してみました。

オシレータの周波数は CT によって決まり、ほかの回路定数の影響はほぼ受けないようです。発振周波数から決めて、あとは、出力電圧からスイッチングのデューティー比を計算、それと出力電流から L の最小値を決めればよいようです。それで決めた回路定数をもとに、シミュレータを使って動作確認をして回路定数を少し変えました。下の図が回路定数を変えてシミュレーションした回路、R4 は負荷です。

スイッチング電源の難しそうなところは、負荷の大きさでスイッチングの挙動が大きく変わること、アナログ回路では消費電流が大きく変わることはあまりなさそうなので、消費電流をあらかじめ調べてから設計を調整したほうが良いような気もします。以下は、負荷抵抗を 100kΩにまで増やした時の挙動、スイッチングのタイミングが大きく変わって、遅いリップルもくっきり見えています。周期が 1 kHz 弱ぐらいまでに落ちているのでこれは音になって聞こえてしまいそうで、このようになったら回路定数をまた変えないといけません。ここまできたら実際に回路を組んで確認したほうがよさそうです。今 10μH のインダクタが手元にないのでまずはここまでです。

DR-110 の駆動パルス

DR-110 の回路図は以下ののとおりです。

この回路では、ドラムセットの各パーカッションに 1 ms の負のパルスを入れればタイコが鳴るようです。オシロスコープをあてて、信号が回路図の説明通りに来ているか確認しました。

以下はバスドラムの入力パルスと出力波形です。

Blue: Input pulse, Red: Output
Blue: Input pulse, Red: Output

パルス幅は約 1.3 ms のようです。

以下はスネアドラム

Blue: Input pulse: Red: Output
Blue: Input pulse, Red: Output

ハンドクラップについては、入力パルスだけとりました。

Blue: CP I, Red: CP II

これはバスドラムをシミュレーションした結果です。ほぼ同じ波形が出ています。

パルス幅を細くすると出力が小さくなります。

パルス幅を広くすると出力は大きくなりますが、歪みが出てしまうようです。

DR-110 の改造

またしばらく何も作らないでいましたが、年も明けたしなんとか再開したいです。感覚が完全になまっているので、あまり難しくないものから始めようと思います。まずは死蔵している Boss DR-110 の改造から。液晶も死んでいるのでもうリズムのパタンが読めません。スイッチも半分ぐらいは接触不良になっています。かわいらしい筐体なのでこれを使えるように直すのも楽しいかもしれませんが、液晶が直るかどうか不明ですし、なにより覚えられるパタンの量が少なすぎて、実際に使うには無理な気がするので、もう割り切って音源基板だけ生かして MIDI で鳴らすことにします。

DR-110 は A, B, C, D と四つのパタンのバンクがあって、それらをつなげてソングという曲パタンを作れます。が、液晶が駄目になっているので打ち込みができません。ただ、バンク CとD はプリセットのパタンなので打ち込まなくてもリズムを鳴らしてくれます。こんな音です。懐古的かもしれませんけど、やっぱり好き。独特の湿り気のあるハンドクラップや、本物には全然似ていないけれども別の音として素晴らしいシンバル、たまらないです。

DR-110 Patterns (Bank C)
DR-110 Patterns (Bank D)

中身がどうなっているか調べながら作業を進めてゆこうと思います。