いよいよ、最後のモジュール、ノイズ・ジェネレータです。
“last but not least” なんて言葉がありますが、最後に来て、このモジュール、一筋縄ではいかず、結局一番手がかかったかもしれません。
ノイズジェネレータは、White と Colored の二系統の音出力と、Random Output という、いわばカオスLFOみたいな出力を持っています。Colored の出力は、Blue と Red ボリュームを使って特性を変えられます。音を聴いて気づく不具合は以下の二点です。
- white 出力から出てくる音が、どうにもホワイトノイズに聞こえない。もっとこもっている。
- Red ボリュームがきかない
まずは、外観写真から
動作の詳しいチェックに入る前に、基板の状態をチェックします。
ちょっと作りが雑な感じです。基板の裏面の写真のピントがちょっとぼけているのですが、ジャックのハンダ付けが気になります。ハンダが盛りすぎですし、ペーストがそこいらについているのも汚らしくてちょっとイヤです。
出力をチェック
white出力を聴いてみると、あまり良好とはいえない感じがします。ホワイトノイズというわりにはもっさりしすぎています。
まずは、出力のスペクトラムをチェックしてみましょう。Scope というオシロスコープソフトをつかって、white 出力のスペクトラムを測定します。
こ、これは...
ちっともホワイトノイズではありません。ホワイトノイズは、周波数成分が平坦なのです。これは、1/f 特性のピンクノイズといったほうが近いような周波数特性です。これはちょっとほっとくわけにはゆかない感じです。
回路を読み取る
対策を立てるために、まずは基板から回路図を読み取ってみました。
回路図を読んで見ると、初段の増幅器が 1000倍のゲインを持っていることがわかります。オペアンプで1000倍の増幅器というと、裸ゲインにも近づきつつある増幅率です。オペアンプの裸ゲインは高域で大きく落ち込みますから、測定したデータともつじつまがあいます。これは部品の劣化などは関係なく、こういう設計にすれば、上記のような測定結果になるのはあたりまえのような気がします。どういう意図で設計されたのか理解に苦しむのですが、とにかく問題の原因はなんとなくつかめたので、それを元に以下のように対策をとることにします。
- もっと速いオペアンプを使う
- 初段の増幅器のゲインを落とす
オペアンプの交換
現状では、オペアンプに TL064 が使われています。これは、どちらかというと低速なオペアンプなので、もう少し速い TL084 に交換してみます。
ノイズの周波数特性がこころもち改善しました。まずは狙い通り、でもまだ十分な改善は得られていません。
トランジスタの交換とゲインの調整
オリジナルの設計に手を入れるかどうか迷いもしましたが、現状では、使えるノイズジェネレータとはいいづらいと思い、いよいよ設計にも手を入れることにしました。と、いっても、初段のアンプのゲインを落とすだけなのですが。
初段アンプのゲインを落とすだけでは、出力も落ちてしまいます。それはあまりうれしくありません。そこで、ノイズ源のトランジスタももっとノイズレベルの高いものに交換することにしました。オリジナルでは、BC547 というトランジスタが使われていましたが、ここを 2SC3311 に交換。2SC3311は、秋葉原で普通に入手できるトランジスタのうちで、私の知っている中ではノイズ源として最良です。
ゲインは、1000倍から500倍に落とします。具体的には、回路図の 10Meg の抵抗を 4.7Meg に落とせばOKです。
かなり良くなりました。本当はもっとゲインを落とすともっと平坦になるのですが、これ以上落とすと、出力レベルが足りなくなるので、泣く泣くここでやめました。
とりあえず、最初の状態からはかなり改善したので、white 出力はこれで良しとします。
Redボリュームがきかないのは?
次の問題は、Red ボリュームがきかないことです。これは、低音側トーンコントロール回路の 0.047μF を外して(ついでに容量が正しいかを測ってみて)、付け直して、Red ボリュームの内部を洗浄したら直りました。どこかが接触不良だった模様です。
ハンダ付けの手直し
いや、別に直さなくても良いのですが、万一イモハンダになっていたらまずいなあ、とジャックの取り付けのところだけハンダ付け直しました。
盛りすぎになっているハンダを吸い取って、ハンダ付けしなおして、まわりにべたべたついているヤニを、アルコールをつけた綿棒でふき取って、OKです。
あとはいつものメンテ
ジャックの接点調整、接点清浄、ボリュームの洗浄、ナット磨き
をやって、
やっとこさで、修理完了です!