観念的な話が続いてすみません。日々忙しく作業しているわりにお見せできる結果が出ないモードに入ってしまいました。
作業部屋のスペースを確保するため、アナログレコードを退避する前に、音源をデータ化していますが、192kHz/24bit でサンプリングして、FLAC を使ってエンコード、という方法で落ち着いてきました。
便利さでいうと、44.1kHz/16bit PCM のほうが良いのですが、サンプリング/量子化の解像度を上げると、音の心地よさが格段に良くなるのです。
解像度を上げて録音していると気になるのが、入り込んでくるノイズです。今、私の環境で、無音の状態ですと、大体 -40dB 前後のノイズが入ってきます。大雑把に、MSB から 15-6 ビットめあたりから先の細かいところは、録音してもノイズに埋もれているわけです。
だから、24ビットの解像度で量子化するというのは、ものすごい贅沢で、8ビット分ぐらいは、ノイズを録音するのに使っているわけです。
しかし、この部分を切り捨ててしまうと、音の魅力が薄れてしまうのです。なにぶん聴覚のことなので気のせいなのかもしれませんが。
ノイズに埋もれているからといって、そこにある情報は不要なものばかりとはいえず、ノイズに埋もれていてもまだ聞き取れる信号があるのかもしれませんし、もしかしたら、ノイズそのものが臨場感を出す役に立っているのかもしれません。
そして、臨場感を保つためにデータを使うということは、とても贅沢なことです。すごく単純に、ロスレスコーデックで圧縮した後のデータ量が有意義な情報量と考えると、CD信号に対して、192/24 信号は、約3倍の情報量を必要とします。つまり、普通に音楽として楽しめる CD の信号に、さらに「臨場感」を加えるには、もともとのCD信号に、さらにその倍の情報量を乗せないといけない、といえるのではないかと思います。乱暴な考え方ですが。
一方、この系のアナログ部分はどうかというと、普通の普及型のレコードプレイヤーに、取り立てて特殊な配慮はしていない、普通のレコード盤です。アンプも特に贅沢をしていない安価なものです。それでも、臨場感という観点では、問題なく再現できるわけです。ディジタルでは、やや特殊な機材を使って、データをふんだんに投入しないと得られない「臨場感」が、アナログだと、安価なものでもあっさり得られるわけです。
普段アナログシンセを作っていると、何度となく「なぜディジタルでやらないのか?アナログ方式がディジタルに比べて優れている点など無いのではないか?」の議論に直面するのですが、そうはいってもアナログでないとできないことがあるような気がしてならないのですが、それとこれとがなんとなく関係していそうだな、というもやもやが、ちょっとずつ晴れてきました。
一般に、アナログ楽器がディジタル楽器と比べて不利な点は、再現性とコストだといわれることが多いのです。再現性は確かに不利ですが、コストに関しては、どうでしょう?何を実現するコストかによるのかもしれません。「臨場感」に関しては、アナログのほうがあっさり安価に乗り越えられるのかもしれません。再生系ではそうなんですから。
192kHz/24bit で自宅サンプリング、それを編集することまで出来ちゃうんですから良い時代になりましたよねー。アナログ・オーディオ信号をデジタル化するのにサンプリング周波数と解像度を上げればアナログに近付く。けれども、それはアナログの無段階な領域には決して到達し得ない。だからデジタルはアナログに劣るという話が、今まで説明された中で一番納得出来るものでした。
ジニーさんコメントありがとうございます。
出てきた結論は、今まで散々言われ続けている普通のことなのかもしれませんが、ちょっとこの、考えの、経路が、私にとって大事な気がして、忘れないうちに書いてみました。さらに、この向こう側に、なんか、隠れてる感じがするんです。