1. はじめに

アンチログ回路は、制御電圧を、オクターブごとに周波数が二倍になる音階に変換する、アナログシンセの中ではもっとも重要な回路の一つです。

アンチログ回路には色んなバリエーションがありますが、その中にシンセに良く使われる定番回路がいくつかあります。

ところが、これらの回路は単電源動作にはあまり向いてないのです。それでも、電源が9Vぐらいあれば、2-4Vあたりにアースポイントを作って動作させても無理ないのですが、5Vやそれを下回る低電圧で、しかもオシレータと組み合わせて動かすとなると、アンチログ回路が使う電圧帯をできるだけ小さく押さえたくなってきます。

この記事では、アンチログ回路の単電源低電圧向きバージョンを紹介します。

2. アンチログ回路に温度補償がないとどうなる?

アンチログ回路に色んなバリエーションがあるのはなぜか?というと、それは、たいてい温度補償をするからで、温度補償のやり方に様々なバリエーションがあるからです。

アンチログ回路の基本的な考え方については、この辺の記事で解説しています。

https://gaje.jp/2006/03/13/191/

https://gaje.jp/2006/03/16/192/

https://gaje.jp/2006/03/19/193/

アンチログ回路はつまり入力電圧に対して指数関数の関係にある電圧または電流を得る回路なのですが、これはどうやるかというとほとんどの場合、トランジスタの立ち上がり部分の特性を使います。一番簡単なアンチログ回路は下図のような構成です。

Q1 が指数曲線を得るためのトランジスタで、V2 が入力電圧、出力はQ1のコレクタ電流です。

この回路図は、LTSpice で書いたもので、左側にあるコマンドのうち、 .step Temp 10 30 10 は、温度をパラメータにして、10℃から30℃まで10℃ステップでシミュレーションすることを指示し、.dc V2 0.4 0.5 は、V2 電圧源を 0.4V から 0.5V までスイープすることを指示しています。.step 指示子は、メニューの Edit -> Spice Directive から指定できます。

この回路をシミュレーションすると、以下のような振る舞いになります。

縦軸は対数スケールにしてあるので、このグラフがまっすぐなほど特性の良いアンチログ回路ということになります。温度補償なしのアンチログ回路では、温度の影響を大きく受けうることがわかります。

3. アンチログ定番回路

温度補償なしでは、激しく温度変化の影響をうけてしまうため、アンチログ回路は通常温度補償回路を付加して使います。以下は典型的な温度補償つきアンチログ回路です。

この回路では、V2 を入力とし、出力は、Q2 のコレクタ電流です。有効な入力電圧の範囲が少しかわりますが同じようにシミュレーションしてみましょう。

温度特性が大幅に向上しています。それでもわずかに温度の影響を受けています。ここが 3300ppm/℃の温度補償抵抗を使って補正する部分です。

この回路は定番だけあって危なげない特性なのですが、単電源低電圧で使おうと考えると、多少の欠点もあります。Q1, Q2 のベース電圧を基準として、負電源が必要なことです。単電源でも適宜アース電位を用意すれば良いのですが、少なくとも 1V ぐらいは最低電位から浮かせる必要があります。また、CV は一番底の電圧から始めたいところですが、アース電位より低い CV を使う場合には制約が発生します。

もう一つ良く使われるアンチログ回路に、PNP-NPN 補償型があります。

電源の取り方が先ほどの回路と違っていて少しわかりにくいですが、同じように正電源4V負電源1Vです。V2 は入力電圧で、1Vがアース電位といえます。

シミュレーションした特性は以下のとおり

こちらも良好な特性が得られます。アンチログ回路が必要とする電圧幅も大体同じと考えられます。

4. 単電源低電圧向けアンチログ回路

単電源でVCOを組むときに、アンチログトランジスタにゲタを履かせなくてすむと楽だろうなーと思うことよくあります。

ということで、どういう方法があるか考えてみました。いろいろ過程をすっとばして、どうもこれが一番うまく行きそうです。

フタをあけてみたらなんということはない、普通のダイオード補償アンチログなのでした。これをシミュレーションした特性が以下のとおり

なかなか良い感じです。実はこの回路、色々とクセがあります。どんなクセがあるかというと、例えば

  • 直線性が悪い。
    このグラフからは読み取りにくいですが、上のほう少しなまってます。R1 の値を大きくすると改善しますが、今度はノイズを拾ったりしそうなのが心配です。
  • 入力インピーダンスが低め
    他の回路が、トランジスタのベース入力なのに対して、この回路は、ベース接地回路に近いです。ドライバ側のインピーダンスが高めだと精度悪くなりそうです。

使いこなしは少しむずかしめかもしれません。

でもまあ、気を取り直して、この回路がちゃんと期待通りに動くかテストしてみました。温度補償の部分を調べるのはやっかいなので、まずは直線性だけ調べました。こちらの回路では上の回路図の R1 は 2.2MΩ にしました。結果は以下のとおり

全体まずまず良い直線性のように思いますが、下のほうがつまっています。下の三点はテスターの精度の制約で有効桁数1ケタしか読み取れなかったためかもしれませんが、必要なければ使わないのが無難かもしれません。

5. 結論

...はまだない。

これをたたき台に色々ノウハウをためてゆこうと思います。

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