Analog3 プロジェクトでは、VCA を大量に使うことが予想されるので、無調整で動く VCA ユニットを開発しているわけですが、これが予想に反して大難航しています。以下の記事にあるように、出力に謎のオフセット電圧が出てしまい鋭い CV を入れるとボツボツノイズになるので使い物にならず
ここから3か月が経過、開発は続いていました。が、あまりにうまく行かないので記事に書けないでいました。上記の記事にあるように、「数うちゃ当たるかも」の実験基板を作ったものの全滅しました。

設計した基板そのままではうまく行きませんでしたが、ゲインユニットのペアトランジスタを基板から外して UEW 線で配線したところオフセットが消え安定しました。前回の記事はここまで

この実験を元に、ゲインユニットを分離すべく実験基板第二弾を作ったのですが、それもなんと全滅、一個も安定したユニットがありませんでした。

試行錯誤してみて感じるのが、ゲインユニットが他の部品と同一平面上にあると大きなオフセットが出るらしいこと。ですが、そうなる理由の説明が全く思いつきません。したがってどんなふうに設計を直せばよいかもわからずあてずっぽうの設計変更をしているのですが、それでは改善しませんでした。上写真右上の版のように、トランジスタを遠く離してもだめでした。
ですがそのゲインユニットを遠く離した版で、ゲインユニット上部を銅箔のシールドで覆ったところかろうじてオフセットが消せました。訳がわかりませんが静電誘導的な何かがある印象です。オーディオ周波数帯域のトランジスタ回路でこんな現象は初めて見ました。銅箔のあるなしでオフセットがじゃんじゃん動きます。


しかしあきらめずに第三弾、今度は、ゲインユニットが同一平面になければ良いのではないか、という予想のもとに、極小のブレイクアウトボードを作ってゲインユニットを浮かせることにしました。下の写真の右側が新しく作ったブレイクアウトボードです。左は普段 SOT-363 に使っている 2.54mm ピッチのブレイクアウトボードです。足は 1.25mm ピッチです。面積が無駄に広いように見えるのは、裏面に銅箔を張ってシールド効果を狙っているのと、少し広く作るとブレイクアウトボードの真下に何個か部品を配置することもできるため基板の設計が楽になるためという理由があります。

裏面には銅箔が貼ってあります。グラウンドに落とす必要が出た時のためはんだ付けのためのパッドが開けてありますが、これはできれば使わないで済ませたいです。

部品を乗せてみました。ちっこくてかわいらしいです。

まずはオペアンプと反対側の裏面にこのブレイクアウトボードを載せてみます。少し垂直の距離が取れています。

結果、初めて UEW 配線なしに安定した版ができました。オフセットは二桁に近い改善です。不思議。

実験基板には似た設計の違う版がいくつか載っています。UEW 配線が必要な版もありますがそれはできれば避けたかったので UEW 不要の別版二つを試しましたがどちらもダメな様子。回路は全く同じですが、どちらも良好な版とはオペアンプの向きが違います。それだけでこれだけ変わっちゃうの?と思います。依然謎は深いです。ゲインユニットを表に配置したものと裏に置いたものでオフセットの極性が変わるのもまた不思議です。


オフセットは部品の誤差のせいという疑いもぬぐい切れません。というわけで、良好な版の回路を二枚目の基板上に組んでみたところ、やっぱりオフセットは出ません。部品誤差の可能性は下がるばかり。

結局のところどう設計すれば良いか確信は得られませんでしたが、初めて再現性のある安定した実装ができました。ここを取り掛かりに VCA ユニット設計を進めてみようと思います。






