無調整 VCA ユニットを開発中です。最初のバージョンでは変なオフセットが出力に出るためプリント基板の設計を変えた V2 を作っています。が…
https://github.com/naokiiwakami/vca-unit/tree/v2
シミュレーションはうまくいってます。ブレッドボードで動作確認もして OK でした。ユニバーサル基板に回路を組んでも大丈夫。しかし、本番の 23mm x 11mm の基板に実装すると、やっぱりオフセットが出ます。0V 入力 5V CV で 0.4 V ぐらい。これでは鋭いアタックが CV に入った場合ボツボツいうノイズになってしまって使えません。この問題を何とか直さないといけません。
V2 では正の CV を受ける PNP型と、負の CV を受ける NPN 型の二つのタイプを作っています。どちらも同様の問題があり、問題追跡には NPN 型を使っています。以下が回路図

実装は下の写真のようにかなり詰まっています。

まずは Q3 によるゲインユニットに不均衡が出ていないか調べるため、オペアンプを取り外してみました。出力端子を GND に落とすと回路は完全に対称になります。オペアンプを外したため Q1 の CV-電流変換回路が死んでしまったので CV 端子と Q1 のベースを直結して復活させます。CV は -5V 相当になるように調整しました。各所の電位を測って赤字で書き込みました。同様の回路をブレッドボード上で組んで測定した電位を青字で書き込みました。両者は特に大きく違っているわけでもなく。でも変です。この Q3 出力の電位差なら出力は 50mV 程度で収まるはず。

実際ブレッドボード版に出力段の作動増幅器を入れてみると出力はだいたい 50mV になります。

何が起きているのか全然理解できません。PCB に部品を入れた時だけなんでこんなにでかいオフセットが出るのでしょう?

そこで、PCB 版を一か所ずつ順々に組んでどこから大きなオフセットが出るか調べてみました。残りの回路はブレッドボード上に組みます。結果は以下の通り
| Output diff amp | 2.5V voltage source | CV to current | Gain unit (Q3) | Offset |
|---|---|---|---|---|
| breadboard | breadboard | breadboard | breadboard | fine (~50mV) |
| breadboard | PCB | breadboard | breadboard | fine (~50mV) |
| breadboard | PCB | PCB | breadboard | fine (~50mV) |
| PCB | PCB | PCB | breadboard | fine (~50mV) |
| breadboard | PCB | PCB | PCB | fine (~50mV) |
| PCB | PCB | PCB | PCB | bad offset (-0.4V) |
これは謎です。すべての部品が基板に載っているときだけ変なオフセットが出るようです。なんで?
ところで、あれこれ回路を調べている最中に、ゲインユニットのトランジスタ Q3 を触るとオフセットが大きく変わることに気づきました。試しに竹の耳かきで Q3 を強く押してみると、オフセットが小さくなります。なんだこれ?でもはんだ付け不良とも違うのですよね。そこは何回も確認しました。竹は絶縁体ですから電気的な影響ともちがいそう。じゃあ機械的な影響?何かとの距離が動作に非常に敏感に影響しているのでしょうか?でも何と何の距離?

とはいえこれは何かのヒントです。上の写真にプローブが写ってますが、これは発振しているかどうかを確認するためオシロスコープと繋がっています。発振はありませんでした。Q3 を押すだけで動作が変わるならQ3 を基板と離せば正常動作するんでしょうか?これを確かめるため、Q3 だけ基板の上にぶら下げてみました。

結果は…良くなりました。

やっと PCB を正常動作させるとっかかりが見つかりました。ですがこんな風にユニットを作るのはもちろん現実的ではありません。PCB の設計を直さなくてはいけないです。
ぎちぎちに詰め込んでいる配置の何かが悪さをしているんだと思うんですが、今のところ何をどうすれば直るのか確証がありません。あてずっぽうでプリント基板を設計し直して解決しなかったのでもう一度あてずっぽうをやる勇気がありません。もう少し何かの証拠をつかみたいです。

追記:2025年10月29日
基板をどう直せばオフセットが改善するか予想がつかないので失敗作を多数出す覚悟で当てずっぽうの修正をめったやたらと行った基板を作ってみました。中にはまあまあ OK なものもありましたが、部品の精度によるばらつきもあるでしょうからもう一声の改善が欲しいところです。

全体の傾向からは、ゲインユニットのトランジスタと他の部品の位置関係とトランジスタの下に銅箔プレートを置くかどうかが特に影響があるように思えます。同じような基板をもう一枚作ろうと考えていますが次は良くなる確信がもう少し欲しい、ということで UEW 線を使って基板の魔改造を繰り返しています。

ようやくこれなら良いかな?という結果が得られました。

改造内容はこれです。基板の裏面に GND プレートが貼ってある版を使って裏面の銅箔の上にゲインユニットを置きました。色々な実験からゲインユニットと作動増幅器を構成するオペアンプを静電的に非干渉にすると良い結果が得られるように思えます。距離を離す、あるいは間に金属板を置くのが良いようです。理由は相変わらずわかりません。

ここからどういう風にプリント基板を設計するのかもまだ悩ましいですが以前行っていた空中配線よりは現実味が出てきました。



