超音波距離センサでは、短い超音波バーストを発生して受け取った音波の時間差から対象物の距離を計算しますが、そんな仕組み上複数のセンサが混在している環境では誤動作が起こりそうです。センサごとに音波を変えたりして何とか識別したりすることは可能?という疑問から、まずは発生した超音波バーストはレシーバに届くときにはどんな波形になっているか調べてみました。
どんな風に調べたかの話は長くて煩雑でこの記事の主題と直接関係がないので別記事に書きます。この記事では結論だけ。以下がトランスデューサからの出力波形です。

横軸 0.1 ms/div 縦軸 2V/div です。0.1 ms の間に 4 周期なので 4 / 0.1E-3 = 40 kHz と、以下にあるデータシートに書かれた信号パタンどおりに超音波バーストが出ていることがわかります。8パルスはオシロスコープ上で見られませんがこれはアナログオシロスコープの限界のためです。波形を記憶できないので入力パルスをトリガにすると最初の数回は画面の左端に消えてしまいます。

さてトランスデューサに与えている波形がデータシート通りなのを確認したところでレシーバ側の波形をとってみます。

設定は同じ、横軸 0.1 ms/div 縦軸 2 V/div です。増幅がかかった後の信号を拾っています。5V で飽和するので波形にクリップがかかっているのが見て取れますが、それより、周波数は依然 40kHz ですがパルス数は8個ではすみません。波形は長く尾を引いています。トランスデューサもレシーバも 40kHz に特化しているようですので機械的に共振が起きているためこんなに長く尾を引くのかもしれないし反射経路が複数あってリバーブがかかったようになっているのかもしれません。どちらかはわかりませんが、今ある機材でそれを切り分けるのは困難そうです。周辺の音をノイズとして拾ってしまわないようにするにはラジオの同調のように特定周波数での共振を利用するのは理にかなっているように思えるので前者の要因が大きいのではないかと想像はしています。ちなみに対象の距離を変えて横軸を 50 μS/div に変えるとこんな波形が取れました (上の写真では DC 入力、こちらは AC 入力で、縦軸の挙動が少し違います)。障害物を二個拾っているのかなとも思います。ただ、センサ出力はこの波形から距離を割り出すもので細部は処理中に切り捨てられます。

この波形を見たところでは、トランスデューサに与える波形を変えてセンサの個体を識別するのは簡単ではないように思われます。トランスデューサにこまこまとした変調をかけてもレシーバで受けたときには細部はつぶれてなくなっているんじゃないでしょうか。さらなる実験が必要そうです。楽しいけど全然成果があがらないなあ。