加算合成方式

楽器音は、一般的に「基音」とよばれる正弦波に、その整数倍の周波数の「倍音」と呼ばれる正弦波が重なってできています。この、基音と倍音の関係で、色んな音色が作られているわけです。シンセサイザーは、大雑把に言うと、この倍音構成を加工する装置なわけです。

アナログシンセのほとんどは、減算合成方式と呼ばれる方式で音を作ってゆきます。
減算合成方式では、倍音が豊富な、ノコギリ波やパルス波のような波形をオシレータで作ってから、フィルタで倍音を削り取って音を作ります。そのため、VCO – VCF の構成になっているのですが、

合成方式は、このほかにも色々あって、加算合成方式と呼ばれる方法もあります。倍音構成を作るために、素直に、正弦波を足し合わせてゆきましょう、という方式です。
たとえばオルガンなども加算合成の一種なのですが、一般的にアナログ回路で行うには不向きで、アナログシンセではあまりみられません。

ところで、楽器音の基音と倍音は、厳密に言うと、整数関係から少しずれたりします。特にアタックのところでは、ピッチ感がないぐらいにぐちゃぐちゃに崩れたりするのですが、こういうずれが楽器の音の自然さを出している、という研究もあります。

加算方式は、減算方式と比べて、この「ぐちゃぐちゃ」を再現するのに向いているのです。その、実例のデモが synth-diy ML に流れていました。

by Michael Bechard [audio:http://friends.kunstmusik.com/mbechard/files/lead_clean.mp3]

これは、16倍音の加算合成方式の楽器にディストーションをかけたものを3つユニゾンした音だそうですが、特別なのは、倍音ごとにピッチやエンベロープを細かく制御しているのだそうです。特にアタックでは極端にモジュレーションをかけて、「ぐちゃっ」とつぶしています。

これは、すごいです。特に、アタックの部分のはじいた感じや、弦がうねるような感じがでていて気持ちいいですね。(うねるのはユニゾンのためかもしれませんが)とても残念なのが、ディジタル合成特有の粗くて硬い感じがどうしても出てしまっていることですが、アナログでこれができないものかなー、と思ってしまいました。

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