くろちゃんのオーバーホール

くろちゃんをしばらく貸し出すことにしました。せっかくなのでベストなコンディションで使ってもらいたいもの。くろちゃんも製作がひと段落ついてからすでに数年経過し、少し調子が悪くなっていました。ということで、オーバーホールしてから渡しました。

オーバーホールとは、よくわからない言葉です。こういうのをオーバーホールというのだろうか。
と疑問に感じて調べてみました。

overhaul (plural overhauls)

  1. A major repair, remake, renovation, or revision.
    The engine required a complete overhaul to run properly.

オーバーホールでよさそうです。

ま、余談ですが。

作業は大まかに以下のことをしました。

  • 電源まわりのチェック
  • ゆるくなっている部分の締めなおし
  • マスターチューン機能の追加
  • 動かなくなっている機能の修復
  • キーボードの整備
  • ベンド機能追加のためのキーボード回路改造
  • ベンド機能の実装
  • VCOの再調整

では、作業記録を順を追って...

電源まわりのチェック

くろちゃんのVCOのピッチは時々不安定になってふらつくことがあります。さらに、LFO の動きによって VCO のピッチがゆれるように。これは、Doepfer の修理のときに同じものを見たぞ、ということで、電源周りの配線のチェックです。
案の定、電源を配る配電基板を触ると、不具合が出たりやんだり。ここの接触が悪いのですね。コネクタを一旦全部外して付け直したら、格段に安定性が増しました。

それにしても、アナログシンセが経年により悪くなるところは、接点ばかりです。くろちゃんに限らず、今まで関わった古いアナログシンセは、ほぼ例外なく接触不良がありました。接点はメンテナンス性を上げるためには排除しづらいものがありますが、楽器の性能という意味では、確実に品質を落とすような気がします。ここは何か考えどころかもしれません。

ゆるくなっている部分の締めなおし

これは、簡単なハナシで、ロータリースイッチなど締め付けがゆるくなっていたので締めなおしました。
ロータリースイッチは過去に何回も締めなおしています。次に作るときにはなにか緩まなくする工夫が必要かもしれません。やはりメーカーと同じように基板はシャーシ/サブパネルに取り付けて、ロータリースイッチのナットは接着剤で固定してしまうのが確実な気がします。こういう設計、やってみたいなあ。まずは小物から。

マスターチューン機能の追加

これは、経年の不具合ではなく、製作時の問題です。
くろちゃんには、マスターチューンつまみがあるのですが、実は、最初にお披露目したときに、そこの実装が間に合わず、マスターチューンつまみにはVCO1 だけが割り当てられています。

それで、くろちゃんでは、マスターチューンがきちんと機能せず、チューニングは VCO1, VCO2, VCO3 と個別に三回行わなくてはいけませんでした。これは、実際に使うときには超不便!

ということで、きちんとマスターチューン機能をつけました。

マスターチューンは、VCO1 のコントローラの一部に入っています。


こんな風に、乱雑に基板が取り付けられている最深部にあります。
とほほ、と泣きながら(うそです、ほんとは楽しくてわくわくしながら作業している)基板を掘り出してきます。
そして、コントローラ回路は、こんな風になっていました。

http://synth-diy.up.seesaa.net/image/controller.PDF

これを、こんな風に修正。

マスターチューン信号は、キーボードからの CV にそのまま乗っけてしまうのが得策です。こうすれば、VCO間でマスターチューン CV に格差が出ないので調整箇所が少なくてすみます。

回路図どおりにコントローラ基板を修正して、再度パネル取り付けたところです。追加したサミングアンプの誤差によりスケールが狂ってしまうかもしれないので、ここにマスタースケール調整をつけました。パネルに取り付けた状態で調整できるように、横向きトリマー。ストックの最後の一個でした。さようなら。

スケールを調整して、マスターチューンを動かすと、3個の VCO が見事に連動して動きました。うわー、楽になった感動。てか、普通シンセはこうなので、不具合を直しただけなのではあります。

キーボードCV周りは、精度をもっとも要求されるデリケートな部分なので、そこに手を入れるこの修正が今回最も緊張する作業でした。

動かなくなっている機能の修復

といってもどこが動かなくなっているか今ひとつ把握できておらず。調べたら、LFO1 からのモジュレーションが VCF にかからなくなっていました。動かないのはそこだけ。思ったより動いてます。まあ、メーカー製だと数年でいかれるなんてことはないんですけどね。

LFO1 の出力から順に追って調べてみると、コネクタが一箇所接触不良になっていました。またですか。コネクタの信頼性などもこれからは少し考えたほうが良いかもしれません。ちなみに、Analog2.0 では違うコネクタを使っています。ピンヘッダに挿す PC などでも使われているものなので、少しは良いとは思うのですが。

これで、LFO1 からの信号を受け付けるようになりました。全快!と、思いきや、リバースのノコギリ波だけかかりません。実は、リバースのノコギリ波は、LFO からきたノコギリ波を、VCF コントロール基板で受け取ってからここで逆転させています。この回路のどこかに異常があると思われます。また信号を追ってみると、普通にハンダ付けされている箇所で信号が突然途切れています。

写真にもうまく写っていませんが、外から見てもちょっとわかりません。それとわかってルーペで見ても、「あー、ヤニがついてるなあ」ぐらいにしか見えません。これがよく言われるイモ半田ですね。おそろしい。

イモハンダの部分を修正して、信号の導通を確認。さあこれで全快?と思いきや、まだだめです。ノコギリ波を通す配線の一部に UEW 線を使っていたのですが、そこのハンダ付けが中途半端で、経年で導通が切れたと思われます。外してみると、被覆がはがれていませんでした。これもまたすぐに問題が出ないだけに厄介な問題です。ハンダ付けは丁寧にやらないといけないですね。

キーボードの整備

接触不良のキーがいくつかありました。これはもう、何度修正しても起きている問題です。やはりアナログ機は接点が鬼門です。

スイッチはステンレス棒に金メッキした接点を接触させるもので、おおむねきちんと動いていますが、キーによってはすぐに接触が悪くなります。そろそろ抜本的な対策をとらないといけないのかな、と感じました。

ベンド機能追加のためのキーボード回路改造

くろちゃんはまだ未完成です。ベンダーがまだついてないんです。ここの製作がなかなか始まらないのは、鍵盤左手のパネルのデザインをどうすれば良いか、絵を描いてもどうもぴんとこなくて設計が決まらないためです。
実は、くろちゃんの左手パネルがいくら絵を描いても決まらないなら、プロトタイピングできるようにしよう、というふうに考えたのがオンガクシールドのはじまりでありました。ということで、今年の MTM05 を機会に、オンガクシールドをくろちゃんのベンダープロトタイプとしてくっつけました。

これがもともとのキーボード回路

もともとベンダー入力は用意してあったのですが、Arduino/オンガクシールドをつなぐと、予想していなかった問題が。ベンダー入力は、0V を基準にして、電圧がマイナスになるとピッチが上がり、プラスになると下がる、という設計だったのですが、Arduino は 5V 単電源です。普通に 2.5V を中点に使うと、2.5オクターブも下がってしまいます。
そこで、ベンダー回路からのプラス電圧を相殺する仕組みが必要になります。また、Arduino の出力範囲はどんなにがんばってもプラスマイナス 2.5V、もともとの設計だと、これはプラスマイナス 2.5オクターブです。モジュレーションの幅としては、少し心細いです。ベンダー入力に関しては、 Oct/V のスケールを守ることにはほとんど意味がないと判断して、ここはもう少し広い範囲で変調がかけられるようにしました。

そして、これが改造後のキーボード回路

ベンダー入力からのゲインが少し上がり、またベンダー電圧のオフセットがつきました。さらに、ベンダーをつないでいないと今度は 2.5オクターブ高くなりすぎるので、ベンダー非接続時に 2.5オクターブ落とす仕組みも入れました。それと、Arduino に給電するために、電源線を引き出しました。

これらの改造は、左手パネルの設計確定後には必要なくなるような気がします。そういうわけで、もう一度改造が必要と予想しています。

ベンド機能の実装

ベンドモジュールは、アップの写真を撮るのを忘れてしまったのですが、ニンテンドーDS用のタッチスクリーンとオンガクシールドからできています。

かわりにオンガクシールド単体の写真だけでも...

オンガクシールドの CV 出力をベンド入力につないであとはひたすらソフトウェア開発です。

オンガクシールドのボタンをキートランスポーズに使います。通常モードでは、タッチスクリーンのX軸がピッチベンド、Y軸が LFO 深さです。LFO はオンガクシールド内の LFO モジュールを使います。左ボリュームが LFO のスピード、右ボリュームがベンド深さに割り当てられています。
ボタンを両方同時に2秒間押すと調整モードに入ります。調整モードでは、左右ボリュームを使ってオクターブスケールとレンジを調整します。調整した結果はフラッシュメモリに書き込みます。次回起動時にはフラッシュメモリから調整結果を読み込むので起動のたびに調整しなおす必要はありません。(MTM05の時には必要あった)

スケッチはこんな風になりました。

Demo6_Bend_Kuro

アプリプログラムは比較的簡単に書けるオンガクシールドでも、使い勝手を細かく調整すると結構複雑なプログラミングになります。ざっくばらんに作り始めたので設計が汚いせいもありますが。

VCOの再調整

最後の仕上げはオーバーホールでは必ず行う、VCO のスケールとレンジの再調整です。ピッチがきちんと合うとやっぱり気持ち良いです。

以上、くろちゃんのオーバーホール作業記録でした。

丁稚先で良い仕事をしてくれるといいなあ。がんばって欲しいです。

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